70年代(昭和でいうと45年から54年)のカバーアルバムをご紹介します。2012年(平成24年)に発売された柴田淳の「COVER 70’s」です。
発売元のビクター・エンタテインメントによると
選曲は柴田淳が幼少の頃より台所で母親が口ずさむメロディーや歌声が自然と聞えてきては一緒に口ずさんでいたという、慣れ親しんできた名曲の数々をセレクト。柴田淳のルーツとなる名曲達は世代を超えて、今なお語り継がれる日本の70年代歌謡曲のスタンダード。
だそうです。柴田淳は1976年(昭和51年)生まれなので、ちょうど自分が生まれた頃の曲、ということになりますね。この頃の代表的なヒット曲が選ばれています。
では1曲ずつ簡単にご紹介を。
1.異邦人
♪子どもたちが 空に向かい 両手をひろげ♪で始まる「異邦人」は久保田早紀のデビュー曲。1979年(昭和54年)発売です。作詞作曲は久保田早紀自身。
イントロのあの象徴的なメロディはオリジナル通りですが、オリジナルの強烈なエキゾチック感を少し抑え気味にして、さらりと聴ける仕上がりになっています。柴田淳の歌い方も少し軽めを狙っているようです。
2.みずいろの雨
1978年(昭和53年)発売。八神純子の曲です。作詞は三浦徳子、作曲は八神純子。
♪ああ みずいろの雨~♪
八神純子の艶っぽさとはまた違った、透き通るような歌い方が印象的です。
3.迷い道
1977年(昭和52年)発売。作詞・作曲・歌は渡辺真知子。
♪現在、過去、未来~♪という歌詞でお馴染みの曲ですね。
オリジナルの渡辺真知子はハリのある声のイメージが強いですが、柴田淳は部分的にファルセットも使ってソフトに歌っています。
4.あなた
1973年(昭和48年)発売。小坂明子作詞・作曲・歌。ヤマハのポプコンと世界歌謡祭でグランプリという大ヒット曲です。♪もしもわたしが家を建てたなら♪と歌う小坂明子は当時16歳だったそうす。
16歳の小坂明子はまだ見ぬ未来に向かって歌い、30代の柴田淳は過去を振り返って歌っているようで、比べるとやっぱり小坂=幼さや純真さ、柴田=大人の切なさ・もの哀しさというような違いが感じられます。思わず「愛」とか「人生」とか、いろいろ考えてしまいました。
5.木綿のハンカチーフ
♪恋人よ 僕は旅立つ 東へと向かう列車で♪1975年(昭和50年)発売の太田裕美の代表的ナンバーです。作詞は松本隆、作曲は筒美京平。柴田淳の歌い方は太田裕美を意識したものになってますね。ファルセットで歌う箇所や母音「u」の使い方が似ていると感じます。
6.飛んでイスタンブール
オリジナルは庄野真代で1978年(昭和53年)発売です。作詞はちあき哲也、作曲は筒美京平。当時はイスタンブールなんて行ったことある人、ほとんどいなかったんじゃないでしょうか。イスタンブールというだけで、場所もよく分からずあこがれましたねえ。
♪おいでイスタンブール うらまないのがルール♪
7.青春の影
7曲目にして初めて男性の曲をカバー。青春の影は1974年(昭和49年)発売。財津和夫作詞作曲のチューリップの曲で、愛を歌ったバラードです。柴田淳はずいぶんキーを上げて歌ってますね。チューリップの原曲キーはG、柴田淳はC#のようです。
♪自分の大きな夢を追うことが 今までのぼくの仕事だったけど
君を幸せにする それこそが これからのぼくの生きるしるし♪
8.秋桜
1977年(昭和52年)発売の山口百恵の曲。作詞作曲はさだまさし。嫁ぐ娘の母への想いが描かれた歌ですが、山口百恵は当時まだ10代だったそうです。まあでも百恵ちゃんは21歳で引退だから、この頃から三浦友和との結婚は意識されていたってことでしょうか。
女性の結婚年齢がぐっと上がった現在となっては、柴田淳のような大人の女性が歌ってもしっくりきますね。(厚労省によると昭和50年の女性の平均初婚年齢は「24.7歳」、平成23年は「29.0歳」だそうです)
♪こんな小春日和の穏やかな日は あなたの優しさがしみてくる
明日嫁ぐわたしに 苦労はしても笑い話に時が変えるよ 心配いらないと笑った♪
9.東京
1974年(昭和49年)発売。男性3人組フォークグループ、マイペースのデビュー曲。作詞作曲はリードヴォーカルの森田貢です。♪東京へはもう何度も行きましたね 君の住む美し都♪
マイペースは最近活動を再開されたそうです!
この曲はいろんなアーティストがカバーしています。女性では丸山みゆきのものがありますが、柴田淳のほうがオリジナルの素朴な味わいを引き継いでいるように感じます。
10.スカイレストラン
1975年(昭和50年)発売。男性2人、女性1人のコーラスグループ、ハイ・ファイ・セットの名曲です。作詞は荒井由実(現・松任谷由実)、作曲は村井邦彦です。詩、曲、歌とも素晴らしいこの曲に柴田淳が果敢にチャレンジしています。
♪なつかしい電話の声に 出がけには髪を洗った
この店でさよならすること わかっていたのに♪
うーん、切ない歌詞ですね。ハイ・ファイ・セットの山本潤子も、柴田淳も、どちらも素晴らしい!
11.22才の別れ
「22才の別れ」は伊勢正三と大久保一久のフォーク・デュオ、風のデビュー曲です。1975年(昭和50年)発売。作詞作曲は伊勢正三。フォーク全盛期のこの頃、ランキングにはフォークの曲がずらっと入っていたように記憶しています。
♪あなたに「さようなら」って言えるのはきょうだけ♪
女性視点で書かれた歌詞なので、柴田淳が歌ってもとても自然ですね。
12.Mr.サマータイム
「Mr.サマータイム」は男女4人のコーラス・グループ、サーカスの曲(でもオリジナルは「Une Belle Histoire」というフランスの曲なんですけどね)。発売は1978年(昭和52年)です。日本語詞は竜真知子、作曲はMichel Fugainです。この曲はやっぱりオリジナルのサーカスのほうが良いですね。混声コーラスの重厚感があるので。それにしてもサーカスは2012年に大幅なメンバー・チェンジをしてしまいましたね。弟2人のいるサーカスが好きだったのでちょっと残念です。
♪ミスター・サマータイム さがさないで あの頃の私を♪
13.卒業写真
「卒業写真」はこのアルバムの初回限定盤のみ入っています。1975年(昭和50年)発売。作詞・作曲は荒井由実。まずハイ・ファイ・セットのデビュー曲として発売され、その数か月後荒井由実のアルバムにも収録されています。
♪人ごみに流されて 変わっていく私を あなたはときどき 遠くでしかって♪
この曲を聴くと、同じユーミン作詞(ペンネーム呉田軽穂)の「あの頃のまま」を思いだします。
柴田淳の「COVER 70’s」は割とオリジナルに忠実なアレンジと、切なく軽い柴田淳のボーカルがあいまって、とても心地よいアルバムになっていると思います。まとめて昭和歌謡の名曲を聴きたいなあ、という方はぜひ聴いてみてください♪
※柴田淳の公式サイトによると、
2016年7月9日21:00~ BSジャパン【あの年この歌 スペシャル】
《今でも聴きたい!’60〜’70年代フォーク&ニューミュージック ベスト30》
に出演されるそうです。楽しみ♪