昭和には個性的な歌がたくさんありました。左卜全とひまわりキティーズの「老人と子供のポルカ」もそんな歌のひとつです。
【個性派ソングdata】
アーティスト名:左卜全とひまわりキティーズ
曲名:老人と子供のポルカ
作詞:早川博二
作曲:早川博二
発売:1970年(昭和45年)2月
♪ヤメテケーレ、ゲバゲバ♪
「老人と子供のポルカ」は1970年(昭和45年)発売の曲で、左卜全とひまわりキティーズが歌っています。
出だしの♪ズビズバー パパパヤー♪からして、何かその次に来るものの強烈さを予感させました。左卜全(ひだり・ぼくぜん)の歌い方も、ズレてるような、やる気のないような、それとも悟りを開いているのか、何とも形容しがたい独特の世界観でした。彼とひまわりキティーズとの関係性も少し緊張感が漂っている感じで面白いです。
作詞作曲は早川博二(はやかわ・ひろつぐ)という作曲家。どうしてこの方がこういう曲を作ることになったんでしょうね。
いつの間にか左卜全が歌うことになっていた!?
「老人と子供のポルカ」は、当初は時事評論家の小汀利得(おばま・としえ)に声がかかったそうです。しかし小汀はこれを拒否。そこで左卜全が歌うことになったとか。左卜全が若いときにオペラ歌手だった(!)ことで白羽の矢が立ったのでしょうか。
小汀の写真を見る限り、こういうとぼけた歌を歌おうとは思わなさそうですね。
実は真面目なメッセージ・ソング?
「老人と子供のポルカ」はとぼけた味わいの歌詞や歌い方です。でもその裏に実は社会に切り込むメッセージが込められていたことに、当時の子ども達はどのくらい気付いていたのでしょう。少なくともわたしは「ヘンテコで面白い歌」としか認識できていませんでした。。。
♪やめてケレ やめてケレ
やめてケーレ ゲバゲバ♪
この「ゲバ」というのは「ゲバルト(独:gewalt)」の略なんですね。そして「ゲバルト」とは、デジタル大辞泉によると
《力・暴力の意》主に学生運動で、暴力的手段をもってする闘争。ゲバ。
なんですよね。この曲が発売されたのは東大紛争やらいろいろと学生運動が凄まじかった頃で、発売翌月にはよど号ハイジャック事件も起きています。「内ゲバ」が絶えずニュースになっていましたね。
歌の1番では「ゲバ(ゲバルト)」、2番では「ジコ(事故)」、3番では「スト(ストライキ)」と歌われ、社会的弱者である老人と子供たちがこうした事象や世相を嘆く構造になっています。
♪おお神様 神様 たすけてパパヤー♪
深い歌だったんですねえ!そういう歌を、左卜全が飄々と歌ったのがかえって良かったのかもしれないですね。
ちなみに。子ども達のほう、ひまわりキティーズの中には「ひだまりの詩」で知られるル・クプルの藤田恵美がいたそうです。この方劇団ひまわり出身なんですね。