「いつでも夢を」の歌詞はちょっと不思議


第4回日本レコード大賞は1962年(昭和37年)。大賞受賞曲は橋幸夫吉永小百合の「いつでも夢を」です。

当時、橋幸夫と吉永小百合はまだ10代

【楽曲data】
タイトル:いつでも夢を
歌手:橋幸夫、吉永小百合
作詞:佐伯孝夫
作曲:吉田正
発売:1962年9月(昭和37年)

「いつでも夢を」の発売は1962年(昭和37年)ですから、1945年(昭和20年)生まれの吉永小百合は17歳、1943年(昭和18年)生まれの橋幸夫は19歳。二人ともまだ10代の若さだったんですね。

Wikipedia( 2016年6月15日 (水) 13:18版)によると、

当時は両者とも多忙な日々を送っていたためスケジュールが合わず、別々にレコーディングした音源を一つにミキシングして発売したという。なお吉永の歌がオーケストラと合わず、やむなくピッチを上げて、オーケストラと合わせた。

だそうですが、この、「吉永の歌がオーケストラと合わず、やむなくピッチを上げて」というのが今一つ腑に落ちません。どういう事情だったんでしょうね。確かに、まるで吉永小百合じゃないようなかなり高い声になっています。うーん……。

シンプルなのに不思議な歌詞の魅力

「いつでも夢を」の作詞は佐伯孝夫。作品を挙げると「有楽町で逢いましょう」「潮来笠」「銀座カンカン娘」「夜来香」など昭和歌謡の名曲がずらり。もうこの方なしでは昭和を語れないくらい超有名作詞家で、元々は巨匠・西條八十の弟子だったのだそうです。

そんなスゴイ方の作品ではありますが、「いつでも夢を」の歌詞にわたしはずっと引っかかっていました。

♪星よりひそかに 雨よりやさしく♪

冒頭はなるほど、さすがの詩的表現だ!と唸ってしまうのですが、

♪言っているいる お持ちなさいな♪

ココ。この部分がどうにもしっくりこないんですよ。「言っているいる」の「いる」が2回出てくるのはまあ良しとして、どうして次に「お持ちなさいな」となるんでしょう。

「お持ちなさいな」は文脈としては次の「いつでも夢を」にかかるはずなのに、メロディ構成上は、♪言っているいる お持ちなさいな♪ がひとまとまり。しかも「言う」という内容に続くのが「持つ」なんですよ。「言ってます、持ちなさい」って言われたら「は?どういうこと」と思ってしまいませんか?

そして、♪いつでも夢を いつでも夢を♪とくる。この一連の歌詞がすごく不思議だったんですよね。曲の作り方が歌詞と合ってないのかなあなどとも考えてしまいました。いやでもそんなはずはない。吉田正も偉大なる作曲家ですよ。

で、よくよく考えてみると、たぶんこれ佐伯孝夫が故意に、というか狙ってやっているんじゃないかと思うようになりました。歌詞の中にわざと「?」と感じるような引っ掛かりを作って、歌詞の魅力を際立たせている。そこが彼の名作詞家たる所以なのではないかと。

「いつでも夢を」の歌詞にはもうひとつ「あの娘」という謎があります。
最初の方で橋幸夫が♪あの娘はいつも歌ってる♪と歌うので、

あの娘=吉永小百合

と早合点してしまいますが、吉永小百合のパートでもやはり「あの娘」と歌います。自分のことを「あの娘」とは言わないから、

じゃあ「あの娘」っていったい誰なのよ?という疑問がわきます。

同じことを橋幸夫自身も感じていたようで、同じくWikipedia(2016年6月15日 (水) 13:18版)に以下のようにあります。

橋は歌詞に登場する際、「あの子」については当初吉永を連想して歌っていたが、吉永も歌唱していることに気付き、上に居る妖精のような存在を連想して歌うようになったという。

ええ?「あの娘」って妖精だったんですかー?

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わたしの推測ですが、佐伯孝夫は「あの娘=吉永」のイメージで作詞したのではないかと考えています。でもレコーディングの段になってこのパートは橋幸夫が、このパートは吉永小百合が、とざっくり分けることになってしまった。それで、気が付けば吉永小百合も「あの娘」と歌うことになってしまったんじゃないかと考えているんですが、どうでしょうか。

それともここでも佐伯孝夫はまた、聴き手が「あの娘って誰?」と思うように、わざと引っ掛かりを狙って作ったのでしょうか。

翌年には映画化!

「いつでも夢を」は発売翌年には映画化されました。橋幸夫と吉永小百合の二人のほか、浜田光夫が出演しています。夜間高校で学ぶ吉永と浜田は、昼間はそれぞれ看護婦、工員として働いている。そこへ運転手としてやってきた橋。男性二人が吉永に恋をして…。都会の片隅で貧しいながらも夢を持って働く若者たちの青春群像劇です。浜田光夫(当時20歳)がデビューの頃の近藤真彦みたいに可愛いです!

朝ドラ「あまちゃん」で再注目

2013年(平成25年)のNHKの朝ドラ「あまちゃん」に橋幸夫が出演したのをご存知ですか?主役の能年玲奈(天野アキ役)のおばあちゃん、夏ばっぱを宮本信子が演じています。このドラマに橋幸夫が本人役で出演し、宮本信子と「いつでも夢を」をデュエットしています。ドラマのサントラCD「あまちゃん 歌のアルバム」には、橋幸夫と吉永小百合のオリジナルバージョンが入っていますよ。

さすがレコ大受賞の「いつでも夢を」

いかがでしたか。「いつでも夢を」はさすがにレコード大賞を受賞するだけのことはある、逸話もいっぱいの魅力あふれる楽曲だったんですね。カバーしているアーティストもとてもたくさんいます。有名なところでは1992年(平成4年)にサントリー烏龍茶のCMで使われた、中国語バージョンでしょうか。ほかに、2003年(平成15年)放送のNHK朝ドラ「てるてる家族」の中での当時の桂小米朝(現・桂米團治)と森口博子のデュエットはとてもステキでした。某動画サイトには松田聖子の「いつでも夢を」もアップされてましたね。もう50年も前の楽曲ですが、これからも歌い継がれていくことになるでしょう。


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