第3回日本レコード大賞は1961年(昭和36年)。大賞受賞曲はフランク永井の「君恋し」です。「君恋し」は実は大正時代に作られた曲のカバーでした。
「君恋し」はフランク永井がリバイバルヒットさせた曲
【楽曲data】
タイトル:君恋し
歌手:フランク永井
作詞:時雨音羽
作曲:佐々紅華
発売:1961年(昭和36年)
「君恋し」の作詞は時雨音羽(しぐれ・おとは)、作曲は佐々紅華(さっさ・こうか)。どちらも読み方が難しいですね。佐々が最初にこの曲を作ったのは1922年(大正11年)頃と言われています。
「君恋し」はフランク永井の前に何人かが先に歌っています。大きくヒットしたのは1929年(昭和4年)発売の二村定一(ふたむら・ていいち)版ですが、ほかにも高井ルビーや木村時子など。浅草オペラの方々ですね。この頃は「君戀し」と書いたんですね。
昔の「君恋し」とは歌詞も違っていた!
元々は作詞作曲とも佐々だったようで、高井と木村版では二村版以降のものとは歌詞が異なります。そして高井版と木村版も微妙に歌詞が違っています。ややこしい!
後から作られたほうの、時雨音羽作詞の方の歌い出しは
♪宵闇せまれば 悩みは涯なし♪
ですが、佐々紅華作詞だと
♪木枯らし吹きて 思いは深し♪
となります。また木村時子の録音では、カフェのウェイトレスである自分は世間では蔑まれたりするけれど、恋しいあの人が早く大学を出て成功するように少ないお給金を貯めてあの人に学資を送る、といった内容の切ない長セリフが入っています。
聴き比べが楽しい、さまざまな「君恋し」
あれ?何だかフランク永井と関係ない話ばかりになってしまいましたね。。。でも、いろんな人の歌った「君恋し」、聴き比べるととても面白いもので、つい。それぞれ、全然違いますよ。宇多田ヒカルの母、藤圭子のものも渋くて良いです。
私の中では君恋し=フランク永井イメージがずっと強かったのですが、あらためて二村定一版を聴くと、軽快なスピードで割と明るくあっけらかんと歌う感じに心惹かれるものがありました。複雑に作り込まれたものの多い今の時代から二村の歌唱を振り返ると、彼のシンプルさがとても魅力に見えてくるのかもしれません。
つい先日、浅草オペラと二村定一のイベントがあったようです。行ってみたかったなあ。東京新聞webサイトでの紹介記事はこちらです。