昭和の食卓というと、やっぱり思い出すのは一汁三菜の献立です。おかずを食べたらご飯を食べて、という「口中調味」や「三角食べ」が昭和世代の食べ方でした。平成の今は世界中のメニューや食材が取り入れられたり、「血糖値の急上昇を避けるためにまず野菜から食べましょう」という主張がかなり広まってきたりして、日本人のご飯に対する考え方や行動も随分変わってきました。
夕食はメインディッシュとパンとワインを、なーんてこともありますし、糖質制限で夕食はおかずだけで主食抜き、とかね。
でも昭和の頃は、学校の給食でパンを食べても自宅の朝食や夕食には白いご飯を食べるとか、お酒を飲んだ最後の最後にお茶漬けをいただく、というような家庭が多かったのではないでしょうか。
昭和のあの頃、お米、白いご飯は本当に食事の中心でしたよね。
そんな白いご飯の友と言えば…。というわけで今回は、昭和に生まれ今なお愛される市販のご飯の友、ふりかけについて書いてみます。
Contents
昭和生まれのふりかけは今でも人気者!
のりたま
ご存知ふりかけのロングセラー「のりたま」は1960年(昭和35年)、丸美屋食品工業から発売されました。ほんのり甘味のある玉子の顆粒ときざみ海苔に、胡麻、さばの削り節、抹茶塩などが組み合わされています。
ああ、のりたまと白いご飯との相性の良さと言ったら!
丸美屋食品工業の公式サイトによると、
当時のふりかけは魚が原料のものが主流だったため、鶏卵を使ったのりたまは新しいふりかけとして日本中で大人気となりました。
ところで。のりたまの原材料にはなぜか「こしあん」が使われているのを、ご存知でしたか?
公式サイトに設けられたFAQのコーナーに
「ふりかけに『こしあん』を使っているって本当ですか?」
というものがあります。FAQに載せるくらいだから、きっとこれまで何度もこの質問を受けてきたのでしょうね。対して、丸美屋の回答はこうです。
ふりかけの中には「こしあん」を使用した商品があります。この「こしあん」は和菓子などによく使われている「餡子(あんこ)」ではなく、豆を粉末状にしたもので甘さなどはありません。
なぜ使っているか、については触れられていません。どうやら使用理由はトップシークレットらしいのです。気になりますね。
次に、パッケージについて。
のりたまのパッケージは2016年(平成28年)現在で7代目です。が、緑色をベースにしたデザインなのは発売当初からずっと変わっていません。
最初のパッケージはグラフィックデザイナー大髙重治(おおたか・しげじ)によるもの。ニッカウイスキーの、あのヒゲのおじさん(キング・オブ・ブレンダーズ)のイラストや「子どものバイエル」表紙デザインでも有名な方です。
手のりシリーズ、「手のりたま」もかわいい♪
袋入りのものだけでなく、こんなかわいい容器入りののりたまもあります。「手のりたま」というネーミングがまたいいですね。ひよこの顔は全部で5種類。2007年(平成19年)に発売されました。
限定品になりますが、ひよこチップ入りというのものもありますよ。のりたまの中にほんとにちっちゃなひよこが入っているんです。
ひよこチップかわいい( '∀') pic.twitter.com/zoNmuldJ8l
— ローストビーフタ( 'ω') (@noyufuta) September 11, 2016
ゆかり
三島食品のしそのふりかけ「ゆかり」は1970年(昭和45年)に、最初は業務用のみで販売されました。一般向け市販品としての発売は1975年(昭和50年)になります。
パッケージ裏面に書かれている「名称」は「赤しそふりかけ」ですが、表面には「しそごはん用」とあります(当初は「しそめし用」だったそうです)。ふりかけとあえて言わず「しそごはん用」と書くところが、三島食品のこだわりなのでしょうか。
結構斬新なゆかりのペンスタイル!
商品の台紙には表に
「縁もゆかりも一期一会」
裏には
「紙には”かけ”ませんが、食品には”かけ”られます」
と印刷されているそうです。
このペンタイプ、元々は、焼酎にもゆかりを入れて飲むという三島食品の社長のために作られたものだったとか。面白いですね。三島食品オンラインショップでは「赤しそとチーズの出逢いダックワーズ」というしそのスイーツ(!)も販売されていたりして、なかなかユニークな会社です。
ゆかりのパッケージに「ゆかり」と点字で表示したのも、他社がどうであれわが社はそうするぞ!というこだわりが感じられ、好印象です。
ごましお
「ごましお」はのりたまと同じ丸美屋食品工業のもの。こちらもふりかけの定番ですね。1955年(昭和30年)発売ですから、2015年(平成27年)には発売60周年となり、パッケージに「おかげさまで発売60周年」と記載されています。何の変哲もなさそうなシンプルなごまと塩のふりかけですが、手作りのごましおおにぎりとはまた違ったおいしさがあります。
ごましおも手のりシリーズがあります
画像は「ピンクの梅ごましおちゃん」。ほかに「ゴーゴーごましおくん」もいますよ。
すきやき
すきやきをふりかけにしようという発想がユニークな「すきやき」。こちらも丸美屋食品工業の商品で1963年(昭和38年)の発売です。すきやきに使われる割り下のような甘辛い味でご飯が進みます。
公式サイトの商品説明ではこう書かれています。
旨味たっぷりの牛肉そぼろとたまごそぼろをバランスよくブレンドし、隠し味にすきやき風味の香味油を効かせた、食欲をそそるサクサクとした食感が人気のすきやき味です。
3色パック
丸美屋といえば忘れてならないのがこの「3色パック」(丸美屋食品工業)という商品。1968年(昭和43年)に発売されました。これ、食卓にあったなあ!
元々は当時小学校2年生だった男の子のアイデアから生まれたそうです。
60年代後半は一時、業績不振に陥ったが、68年に一つの容器を3分割して、のりたま、たらこ、ごま塩を入れた新商品「3色パック」がヒットし、危機を克服した。
毎日新聞2009年(平成21年)12月6日より
3色パックの、当時の会社への貢献度はとても高かったんですね。
こちらの商品は「ごましお」と「のりたま」と「たらこ」がひとつの容器におさまっています。今日はどれにしようかな、と迷うのが楽しかったですね。そしてなぜかいつも最後にはごましおが残っちゃったりして。
高級ふりかけと言えば「錦松梅」
庶民派のふりかけを紹介してきましたが、高級品と言えばこれ、「錦松梅(きんしょうばい)」でしょう。社名も同じ「錦松梅」といいます。創業者の旭翁(きょくおう)が食道楽の末つくったものだそうですが、評判を呼び、ついに商品化したのが1932年(昭和7年)。歴史がありますねえ。
東京・四谷の錦松梅本店は2016年(平成28年)現在、建て替えのため休業中。でも全国の有名デパートで扱われていますから、とても手に入りやすいですよ。
「錦松梅」といえば思い出すのがテレビCM。古今亭志ん朝が「中身もいいけど、器もいいねえ!」と言う台詞、覚えている方も多いのでは?
錦松梅は袋入りやプラスチック容器入りのほかに、有田焼や会津塗の器入りで販売されています。高級ギフト、ですね。
オマケその1.ふりかけのルーツを追う
業界団体の全国ふりかけ協会が認定している元祖ふりかけは、フタバの「御飯の友」です。時は大正初期、慢性的なカルシウム不足を解消するために、熊本の薬剤師、吉丸末吉によって考案されました。
一般社団法人 国際ふりかけ協議会の公式サイトでも詳しく紹介されていました。
当時、食料不足の時代背景の中、日本人にはカルシウムが不足しており、それを補う方法として、「魚の骨を粉にしてご飯にかけて食べる」という発想にたどり着きました。そこで、小魚を乾燥させ、粉末にして調理し、青のり・ごまなどを加えて、美味しく食べられるように加工。乾燥を防ぐために口の狭いビンに入れてコルク栓をして蝋で固着。これが最初のふりかけ、『御飯の友』です。
戦時体制下では栄養食品であるふりかけの軍納は強制であり、『御飯の友』も貴重な軍納品でした。
これ、祖母宅にいつも置いてありますo(^▽^)o
おいしいんですよね。#熊本県産買ったよ #御飯の友
https://t.co/IZptlU92jR— Natalia (@du_bist_huebsch) May 4, 2016
震災に遭った熊本の支援のために、熊本市に本社があるこのフタバの「御飯の友」を買うという方も少なくないようです。
オマケその2.平成生まれ「おとなのふりかけ」もご紹介
「おとなのふりかけ」は1989年(平成元年)発売です。最初は地域限定で売り出され、翌年に限定発売となりました。発売時はCMも大きな話題になりましたね。ふりかけってやっぱり子どもの好む食べ物的なイメージがありましたから、「そうか!大人のためのものがあってもいいんだ」と皆、目から鱗だったのではないかと思います。
Amazonの商品説明にはこうありました。
鮭のうまみを閉じ込めた「焼鮭」、佃煮風のひじきにさわやかな青じそを組み合わせた「青じそひじき」、海苔の風味をわさびの辛味が引き立てる「海苔わさび」、甘辛く味付けした「すきやき」、定番のおかかと健康感のあるごまを組み合わせた「おかかごま」の5種類。
おとなのふりかけ「その2」もあります
永谷園 おとなのふりかけ ミニ その2 20袋入×5個
おとなのふりかけは種類が豊富なのもうれしいですね。「その1」が焼鮭、青じそひじき、海苔わさび、すきやき、おかかごまの5種類、「その2」は海苔たまご、梅ゆかり、かつおみりん、明太子、鮭青菜の5種類です。
北海道限定商品もあるらしい
北海道でとれた「毛がに」、「うに」、バター風味の「じゃがバター味」、北海道で作ったチーズを使った「十勝チーズ味」の4種類のふりかけ詰め合わせです。 北海道旅行や出張の際のお土産にご利用ください。
毛がに味とかうに味のふりかけって、すごく興味がわきますね!
まとめ~昭和生まれのふりかけって想像以上に多い
いかがでしたか。昭和生まれのふりかけ、今でも身近なものがたくさんありますね。残念ながら発売中止になったふりかけも数多いですが、やっぱり日本人の食とふりかけは切っても切れないんだなあとあらためて感じさせられました。今度スーパーでふりかけ売場をじっくり見てこようっと♪